【アカデメイア連載 びゅうヴェルジェ安中榛名の古民家移築再生 第

■【アカデメイア連載 びゅうヴェルジェ安中榛名の古民家移築再生 第12回】

 上棟から約ふた月。建物の全貌が現れて来ます。

 主屋の屋根は、天然スレート。
 天然スレートというのは、薄く割れる自然石全般を呼ぶ言葉です。この現場では粒子の細かい粘土が圧力で固まった薄く割れる「玄昌石=げんしょうせき」と呼ばれる天然スレートの一種を使用しました。
 日本では、宮城県香川県が産地でした。でした、というのは、近年はもうあまり算出されなくなっているからです。本当は、国産のものを使用したかったのですが、ここで使ったのは、スペイン産です。今は、こちらの望みの寸法のものを、作って船便で送ってくれます。ただ、発注後2〜3ヶ月かかるので、しっかり発注工程を組んでおかなければ、その工程に入ったときに、材料が間に合いません。その仕事は、工務店の現場監督さんです。
 
 宮城県産の玄昌石は、現地では武家屋敷の住宅の屋根などにふんだんに使われていたのを、今でも見る事ができます。今も、住み継がれているわけです。

 長屋門も姿を現してきました。


 長屋門の外壁は、「ナマコ壁」という腰壁です。壁は、地面に近い部分は、常に雨の影響を受けますから、昔からその補強を考えて様々な対応がなされてきましたが、「ナマコ壁」もそのひとつです。
 ナマコ壁は、多くの場合、平らな瓦、平がわらと、その隙間を漆喰で繋いで行きますが、ここで使っている素材は、私がよく使う白セメント系の素材をベースにした材料です。これに、岩石系の顔料を混合して色を作っています。繋ぎのかまぼこ型は、やはり漆喰です。四人の職人さんが一週間がかりでした。
 ベースの部分のグレーの部分が完成したところです。この後、漆喰が施されます。